テクノロジ系 > 大分類3 技術要素 > 中分類10 ネットワーク > 3.通信プロトコル > (1)プロトコルとインタフェース > ⑥LANとWANのインタフェース
LANとWAN
ネットワークの接続方法は大きく分けてLANとWANに分かれています。
LANは企業の1つの事務所や施設、自宅などで動作する小さなネットワーク、WANは事務所や施設間や都市間、国際間など広範囲に接続するネットワークです。LANはユーザーが自前で構築するのに対し、WANは電気通信事業者(通信キャリア)が管理する必要があります。インターネットはWANの一種です。
イーサネット
イーサネットはLANでネットワークを構築する際に用いられる代表的な技術です。Intel、Xerox、DECによって開発されたていたものを、1980年代にIEEE 802.3として標準化されました。
イーサネットはTCP/IPのデータリンク層(OSI基本参照モデルでは物理層・データリンク層)で動作します。具体的な内容は次のようになります。
ネットワーク機器の識別方法
イーサネットにおいて通信する際にネットワーク内の機器を識別するために使用するものがMACアドレスです。MACアドレスは、物理アドレスとも呼ばれ製造時に付与される固有で変更不可能なアドレスです。全体で48ビット(6バイト)あり、24ビットずつ2つに分割されます。
前半24ビットがOUI(ベンダコード)と呼ばれます。これはIEEEが管理しているベンダー識別用のIDです。後半24ビットはベンダ管理番号と呼ばれ、ベンダー内で重複しないように割り当てる番号です。
扱うデータ方式
データリンク層で扱うデータの名前をフレームといい、特にイーサネットで扱うデータをイーサネットフレームと呼びます。データリンク層の技術 ≒ イーサネットである現在、フレームといえばイーサネットフレームだと考えて差し支えないです。
イーサネットフレームにはIEEE802.3 EthernetとDIX Ethernetの2通りありますが、現在はDIX Ethernetが広く普及しており、一般的にイーサネットといえばDIX Ethernetを指します。
DIX Ethernetのフレームの形式は以下の図のようになっています。
図の中のひと区画(プリアンブル、宛先MACアドレスなどが書かれている区画)をフィールドと呼び、各々役割を持っています。イーサネットフレームにある6フレームの役割は以下の通りです。
- プリアンブル
フレームの先頭にあり、イーサネットフレームの始まりを示す。 - 宛先MACアドレス
通信する宛先のMACアドレスを示す。「ネットワーク機器の識別方法」に示した通り、MACアドレスは48ビット(6バイト)からなるため、フィールドの大きさは6バイトである。 - 送信元MACアドレス
通信する送信元(イーサネットフレームの作成元)のMACアドレスを示す - タイプ※1
イーサネットの上位層(ネットワーク層)のプロトコルを示す。例えば上位プロトコルがIPv4である場合0800(16進数)となる。 - データ
タイプで示されたプロトコルのヘッダ・データが格納されている。このデータをパケットと呼ぶ。 - FCS
フレームが壊れていないかをチェックするためのフィールド
宛先MACアドレス、送信元MACアドレス、タイプの3つをイーサネットヘッダと呼び、14バイトあります。また単にフレームといった場合プリアンブルを含まないことが多く、最大フレーム長は1518バイトになります(1度足し算してみてください)。ただし、機器の設定によって増やすことも可能で9000バイトに変更して利用することが多いです※2。1518バイトを超えるフレームをジャンボフレームと言います。
接続方式(LANケーブル)
LAN内で機器間を接続するためのケーブルには以下のものを使用します。
- 同軸ケーブル
銅線を絶縁体で囲んだケーブル。 - ツイストペアケーブル
銅線を2本ずつペアにしてより合わせたケーブル。LAN接続で一般的に使われているケーブルで、LANケーブルと呼ばれるものは通常ツイストペアケーブルのことを指す。 - 光ファイバーケーブル
石英で作られたコアという芯をクラッドが覆う構造で、コア内を光信号が反射することで伝送するケーブル。
イーサネットには複数の規格が存在します。これは使用するケーブル、伝送速度、伝送距離を規定するもので、ネットワークを構築する際に、用途や価格などを検討してどの規格を使用するかを決めます。基本的には使用するケーブルによって速度・距離・価格が変わってきます。次でケーブルごとに使用できる規格を見ていきます。
同軸ケーブルを使用する規格
同軸ケーブルは伝送速度が遅く距離も短いため一昔前の規格のように思われていますが、現在でもテレビを接続する際などに使用されている規格です。
規格 | 伝送速度 | 伝送距離 |
---|---|---|
10BASE-2 | 10Mbps | 185m |
10BASE-5 | 10Mbps | 500m |
ツイストペアケーブルを使用する規格
ツイストペアケーブルは現在主流のケーブルです。同軸ケーブルに比べて高速の通信を実現できますが、伝送距離は100mとそれほど長くありません。ツイストペアケーブルの規格にはカテゴリが存在し、カテゴリの数字が大きくなると性能が上がります。また、100BASE-TXをファストイーサネット、1000BASE-T/TXをギガビットイーサネットと呼ぶ。
規格 | 伝送速度 | カテゴリ | 伝送距離 | 名称 |
---|---|---|---|---|
10BASE-T | 10Mbps | カテゴリ3 | 100m | |
100BASE-TX | 100Mbps | カテゴリ5 | 100m | ファストイーサネット |
1000BASE-T | 1Gbps | カテゴリ5e | 100m | ギガビットイーサネット |
1000BASE-TX | 1Gbps | カテゴリ6 | 100m | ギガビットイーサネット |
10GBASE-T | 10Gbps | カテゴリ6A | 100m |
光ファイバー
光ファイバーは高速で、長距離を伝送できます。
規格 | 伝送速度 | 伝送距離 | 名称 |
---|---|---|---|
1000BASE-SX/LX | 1Gbps | 550m/5km | ギガビットイーサネット |
10GBASE-SR/LR | 10Gbps | 300m/10km |
伝送方式
イーサネットでは伝送方式としてCSMA/CD方式を採用しています。
- Carrir Sense
誰も使っていなければ使用可能 - Multiple Access
全員に向けてデータを送る - Collision Detection
衝突が検出されたら再送する(ランダム時間待つ)
LAN間接続装置
LANによるネットワークを構築する際に用いられる装置は複数の種類があり、OSI参照モデルの階層ごとに分けて説明されます。
リピータ
物理層(L1)で機能する装置。ケーブルに流れる電気信号を増幅・整形を行う機能がある。例えばイーサネット規格10BASE-Tでは伝送距離が100mという制限があるが、これ以上の長さを伝送させるためにはリピータの機能を使用する必要がある。
ブリッジ
データリンク層(L2)で機能する装置。リピータが持つ電気信号の増幅・整形といった機能に加え、イーサネットヘッダの宛先MACアドレスを見て、適切なポートにデータを送信するフィルタリング機能を持っている。ブリッジで分割された領域のことをコリジョンドメインまたはセグメントと呼ぶ。コリジョンとはCSMA/CD方式でも出てくる「衝突」のことで、この衝突を検知する範囲がコリジョンドメインである。イーサネットがデータリンク層までのプロトコルで、ブリッジがデータリンク層の装置であることを覚えていればわかりやすい。
ルータ
ネットワーク層(L3)で機能する装置。IPヘッダの宛先IPアドレスの情報を見て、適切なネットワークにデータを転送する。ルータが持つこの機能をルーティングと呼ぶ。ルータで分割された領域のことをブロードキャストドメインまたは単にネットワークという。
ルータとほぼ同じ機能を持ちながら処理性能が向上している機器にL3スイッチがある。
ゲートウェイ
トランスポート層(L4)以上で機能する装置。L4以上の情報に基づいてルーティングを行うことができる。
ハブ
イーサネットにおいて複数のネットワークをつなぐ集線機器のことを一般的にハブと呼ぶ。扱うレイヤごとに大きく次の2種類がある。
- リピータハブ
物理層(L1)で動作するリピータをハブにしたもの。単にリピータというと電気信号を増幅する装置であるが、リピータハブは複数のケーブルを繋ぐことができる装置を指す。リピータにはフィルタリング機能がないため、データをコピーしてすべてのケーブルに伝送することになり使い勝手が悪いため現在ではほとんど使用されていない。 - スイッチングハブ
データリンク層(L2)で動作する機器で、ブリッジと同じくフィルタリング機能を持っている。ブリッジと同じ機能を持ちながら処理性能が向上した機器がスイッチであり、スイッチはほとんどが集線機能を持つことからスイッチングハブと呼ばれる。スイッチングハブは通常多くのポート(ケーブルの接続口)を持ち、一般的に使われるものは8ポートほどであるが、多いものでは数百ポートある製品もある。スイッチングハブといえば通常はデータリンク層(L2)で動作する機器を指すが、ネットワーク層(L3)で動作するL3スイッチが存在するため、L2スイッチと呼ぶこともある。
無線LAN
無線通信は電波、赤外線、レーザー光線などを利用して通信を行いますが、無線LANの場合は主に電波を使用して通信を行います。電波を使用した通信の仕組みは1970年代のハワイに既に存在しており、その仕組みを基にIEEE 802.11で標準化されました。
無線LANの伝送方式
無線LANでは伝送方式としてCSMA/CD方式を採用しています。
- Carrir Sense
誰も使っていなければ使用可能 - Multiple Access
全員に向けてデータを送る - Collision Avoidance
衝突を回避するために、送信前に毎回待ち時間を挿入する(無線なので衝突は検知できない)
無線LANの動作モードには次の2種類があります。
- アドホックモード
端末同士が直接通信を行う形式。 - インフラストラクチャモード
アクセスポイントを経由して通信を行う形式。通常のWi-Fiとしてイメージするのはこちらのモードである。
無線LANの規格
無線LANはIEEE802.11として規格化されていますが、後発で様々な規格が標準化されており通常はIEEE802.11aのように末尾にローマ字が付いた規格が使用されます。応用情報技術者試験のシラバスでは「IEEE 802.11a/b/g/n/ac」の5つの規格が挙げられていますので、その特徴をまとめました。
規格名 | 速度 | 周波数帯 | 特徴 |
---|---|---|---|
IEEE 802.11a | 54Mbps | 5GHz | 早くから普及した規格。 |
IEEE 802.11b | 11Mbps | 2.4GHz | 障害物に強い規格。 |
IEEE 802.11g | 54Mbps | 2.4GHz | 11bの上位互換。 |
IEEE 802.11n | 600Mbps | 2.4GHz/5GHz | 11a,11b,11gの上位互換で、高速化が図られている。(MIMO、チャネルボンディング) |
IEEE 802.11ac | 1.3Gbps | 5GHz | 11nの上位互換で、さらなる高速化が図られている。 |
表にある通り、無線LANには2.4GHz帯と5GHz帯があります。
- 2.4GHz
電子レンジなど身近な機器でも使用されているため、電波干渉が起こりやすく動作が安定しないことがあります。しかし、障害物に強いため遠くまで届くメリットがあります - 5GHz帯
身近な機器では使用されないため、電波干渉が起こりにくくより安定した通信ができます。しかし、障害物の影響を受けやすいため壁などがあると通信が途絶えることがあります。
アクセスポイント
無線LANの電波を送受信する機器で、PCやスマホなどの端末(ノード)を無線LANに接続し、ルータを介して有線LANへと受け渡す役割を持つ。アクセスポイントはルータと一体型になっている場合が多く、無線LANルータなどの名称で呼ばれることも多い。また、光回線やADSLなどで外部からやってきた通信を電気信号に変えるモデム(ONU)という機器も必要で、通常は無線LANルータとモデムのセットで使用される。
ビーコン信号
アクセスポイントはビーコン信号を送信している。接続するノードはビーコン信号を認識し、その中にあるSSIDでアクセスポイントを識別して通信を開始する。ステルスモードビーコン信号を発信しないモード。ビーコン信号を常に発信したくないときに用いる。ANYモード誰からの接続も受け入れるモード。無条件に接続を受け入れてしまうため、セキュリティ的に良くない。
SSID
SSIDはアクセスポイントを識別するためのIDである。ESSIDはSSIDを拡張したもので厳密には異なるものであるが、ほぼ同じ意味で用いられている。同じSSIDを複数の機器で設定することにより、場所を移動しても無線LANを使い続けることができる機能をローミング機能という。
隠れ端末問題
機器同士が遠く離れていたり、アクセスポイントを挟んで反対側に存在するなどの原因で互いに機器の存在を検知できない場合、CSMA/CA方式による衝突回避の機能が動作せず、データが頻繁に衝突して性能が落ちる問題。
回避方法として、RTS/CTS方式がある。この方式では、ノードがデータ通信を開始する前に送信するRTSとアクセスポイントが送信するCTSという制御フレームによって送信を制御する。これにより隠れ端末問題への対応はできるが、通信効率は低下する。