経営戦略手法

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経営戦略手法はストラテジ系の科目で、一般教養といえるカテゴリの知識です。覚えることが多いですが、知っていれば回答できるうえに将来独立したり経営陣になったときに役立つ知識が多いため、一つ一つ覚えていきたい分野です。

(1)経営戦略

経営戦略の目的,考え方,経営戦略の階層を理解する。
用語例 企業理念,企業戦略,ビジネス戦略,競争戦略,機能別戦略,多角化,シナジー
効果,規模の経済,範囲の経済,イノベーション,チェンジマネジメント,ADKAR(Awareness(認知),Desire(欲求),Knowledge(知識),Ability(能力),
Reinforcement(定着))モデル,ダイナミックケイパビリティ,ベンチマーキング,ベストプラクティス,SDGs,コ・クリエーション戦略,IP ランドスケープ,サーキュラーエコノミー(循環経済),VUCA,TCFD(Task Force on Climaterelated Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)開示

経営戦略とは、企業の中長期的な方針や計画のことを言います。戦略という言葉は文字通り戦いに勝つための策略という意味をもちますが、これを企業経営に当てはめ企業同士が競争する中で自らの経営の方針・計画を立て、企業が生き残るために大局的な組織行動をとるようなことが経営戦略です。企業がもつリソースは有限であり、強みや弱みも企業ごとに異なりますし、その時代によってとるべき戦略も異なります。こういった状況を読み解き、いかに振舞うかを経営者が判断します。

イーゴル・アンゾフ(1918~2002)は経営戦略についての知識を体系化したことで「経営戦略の父」と呼ばれるロシア系アメリカ人の学者です。アンゾフは「成長マトリクス」という理論で知られています。成長マトリクス理論については、この章の最後に学びます。

経営戦略の階層

経営戦略は全社戦略事業戦略機能別戦略の3種類があります。

全社戦略は企業全体の資源配分を最適化します。事業戦略は、企業内で行われる各事業の競争力を最大化します。機能別戦略は事業戦略をさらに現場レベルまで細分化した時の戦略です。これらは全社戦略 > 事業戦略 > 機能別戦略とピラミッド状に階層化できることから、経営戦略の階層と言われます。

事業とは、企業が行う営利的・継続的な仕事のことを言います。企業はその組織を維持するために様々な仕事を行いますが、その中でも企業の根幹をなす仕事のことが事業であり、事業は企業内で複数並行で行われます。事業をさらに細分化したものが業務で、業務を従業員が職務として行うことで事業が成立します。

(2)全社戦略

全社戦略では、全社戦略という言葉自体の意味を押さえることとそれに関連する用語、特にドメイン・コアコンピタンス・M&Aについて学習します。その後、全社戦略を策定するために用いられるツールであるプロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)について学習します。PPMについては頻出なので、問題児・花形・金の生る木・負け犬のそれぞれの詳細まで押さえます。

①全社戦略の策定

① 全社戦略の策定
全社戦略の目的,考え方,代表的な戦略を理解する。
用語例 ドメイン,資源配分,競争優位,経験曲線,CS(Customer Satisfaction:顧客
満足),グループ経営,コアコンピタンス,アウトソーシング,M&A(Mergers
and Acquisitions),TOB(Take Over Bid:公開買付け),エコシステム,アライ
アンス,シェアードサービス,ベンチャービジネス,クラウドファンディング,
インキュベーター

全社戦略は、企業全体の資源配分を最適化するための戦略です。資源にはお金や土地、仕入れたモノや生産したモノ、働く社員など様々なものがありますが、これらは有限です。それをいかに使用して企業としての活動を行うかが資源配分です。

ドメインとは、企業の事業領域のことを言います。ドメインの具体例としては「飲食業」「コンピューター製造業」のようなものもありますが、例えばセブンイレブンの「近くて便利」というように、独自のドメインを考案することにより企業として成功する例もあります。自身の企業の持つ能力を見定めドメインを設定することにより競争優位性を持たせます。これと関連して、他社に真似できない核となる能力のことをコアコンピタンスといいます。

M&AとTOB

M&A(Mergers and Acquisitions)は企業の合併・買収のことで、2つ以上の企業が統合することをいいます。その代表的な手段がTOB(Take Over Bid:株式公開買い付け)です。TOBはある企業が、他企業の経営権の取得を目的として、株式の買い付け価格・株式数などを公示して一定期間に大量の株式を買い付ける手法です。株式を一定以上取得すると経営権を取得されてしまうことから、対象となる企業はその買い付けに賛成か反対するかを表明します。この駆け引きからTOBには成立する場合と不成立となる場合があります。

②プロダクトポートフォリオマネジメント

② プロダクトポートフォリオマネジメント
PPM(Product Portfolio Management:プロダクトポートフォリオマネジメント)の目的,特徴,手順を理解する。
用語例 経営資源配分の最適化,市場成長率,相対的市場シェア,問題児,花形製品,金
のなる木,負け犬

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)は、全社戦略で用いられる分析手法です。市場成長率を縦軸、市場占有率を横軸にとり、自社の各事業における位置づけを把握し、全社レベルで経営資源の配分を判断し、経営資源配分の最適化を図ります。

問題児に資金投入をして市場占有率を高めて花形金のなる木に推移するようにすることが基本的な戦略です。競争激化や投資の失敗などの要因により負け犬になる可能性もあり、その場合は撤退を検討します。

市場成長率と市場占有率

PPMを覚えるときに把握しておきたいのは以下の2点です。

  • 市場成長率が高いと資金が流出する(金がかかる)
  • 市場占有率が高いと儲かる

市場成長率・市場占有率どちらも高い花形は、儲かるが金がかかるということになります。市場が成熟して市場成長率が低くなると資金流出が少なくなります。市場占有率が高いまま市場が成長すれば、儲かって金もかからないということになり、花形に比べて手元に残る金が多くなります。この資金を問題児につぎ込むことで、花形、金のなる木へと推移させるようにします。

市場占有率は市場シェアとも言います。市場シェアには絶対的市場シェアと相対的市場シェアと2種類がありますが、PPMで使用する市場シェアは相対的市場シェアです。

参考:https://the-owner.jp/archives/6523

(3)事業戦略

事業戦略は、企業内で行われる各事業の競争力を最大化する戦略です。

事業戦略ではまず競争戦略について学習し、マイケル・ポーターの理論であるファイブフォース分析、競争の基本戦略について学びます。その後、SWOT分析やバリューチェーン分析などのフレームワークを学びます。様々なフレームワークが出てくるため、それぞれの特徴を押さえていきます。最低限、概要を見てどのフレームワークか答えられる程度には覚えておきたいです。

①競争戦略の策定

① 競争戦略の策定
競争戦略の目的,考え方,代表的な戦略を理解する。
用語例 ファイブフォース分析(既存競合者同士の敵対関係,新規参入の脅威,代替製品・代替サービスの脅威,買い手の交渉力,供給者の支配力),競争の基本戦略(コストリーダーシップ戦略,差別化戦略,集中戦略),同質化戦略,ブルーオーシャン戦略,ESG 投資

競争という言葉は日常でも使用される言葉ですが、経営戦略における競争戦略業界における競争の中で他の企業よりいかに優位な地位を確保するかの戦略になります。

マイケル・ポーター(1947~)はアメリカの経営学者で競争戦略の研究の第一人者です。マイケル・ポーターは、ファイブフォース分析、競争の基本戦略(3つの基本戦略)、バリューチェーン分析など数多くの理論を提唱しています。

参考
『競争の戦略』 マイケル・ポーター著 土岐坤 中辻萬治 服部照夫訳 ダイヤモンド社 1995

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析はマイケル・ポーターが提唱した理論で、自社を取り巻く脅威と業界構造を分析するためのフレームワークです。ファイブフォースとは日本語では5つの脅威と訳され、次の5つの脅威が挙げられます。

①既存競合者同士の敵対関係
②買い手の交渉力
③供給者の支配力(売り手の交渉力)
④代替製品・代替サービスの脅威
⑤新規参入の脅威

このうち、①②③が内的要因、④⑤が外的要因です。これらを分析することにより業界における競争の状況や自社の立ち位置などを把握でき、競争戦略を立てるうえで役に立ちます。

競争の基本戦略(3つの基本戦略)

マイケル・ポーターによると、競争戦略には3つの基本戦略があります。

コストリーダーシップ戦略
低価格設定を行うことにより大きな市場シェアを獲得しようという戦略。低価格設定をするためには製造コストや流通コストを抑える必要があります。

差別化戦略
競合他社に対して差別化を図ることにより高価格でも売れるようにし、大きな市場シェアを獲得しようとします。

集中戦略
ターゲットを狭く設定しそこに経営資源を集中させることにより、その中で高い市場シェアを獲得しようとする戦略です。例えば地域や性別・年齢層などを細かく絞り込んでターゲットを設定します。

② SWOT 分析

② SWOT分析
SWOT(Strength,Weakness,Opportunity,Threat:強み,弱み,機会,脅威)分析の
目的,特徴,手順を理解する。
用語例 外部環境,内部環境,クロスSWOT分析

自社の事業の状況を、外部環境内部環境に分けて、さらにプラス要因マイナス要因に分けて分析します。これにより4事象の区分が存在することになりますが、それぞれ強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)と名付け、その頭文字をとってSWOT分析と呼びます。

さらに内部環境と外部環境を組み合わせて「強み×機会」「強み×脅威」「弱み×機会」「弱み×脅威」で分析をするものをクロスSWOT分析といいます。

③ VRIO分析

③ VRIO分析
VRIO分析の目的,特徴,手順を理解する。
用語例 Value(経済的価値),Rarity(希少性),Imitability(模倣可能性),Organization(組織)

企業の敬遠資源を分析するフレームワークで、Value(経済的価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣可能性)Organization(組織)の4つに分けて分析をします。

④ バリューチェーン分析

④ バリューチェーン分析
バリューチェーン分析の目的,特徴,手順を理解する。
用語例 価値活動,調達,製造,販売,サービス,付加価値,コスト,外部資源活用,バ
リューチェーン再設計

バリューチェーンとは価値連鎖と訳され、商品やサービスが顧客に届くまで行う企業の様々な活動を一連の活動として捉えることを言います。バリューチェーン分析は、それらの活動が最終的な付加価値にどのように貢献しているかということを分析します。バリューチェーン及びバリューチェーン分析はマイケル・ポーターが提唱した理論です。

マイケル・ポーターはバリューチェーンの活動を主活動支援活動に分類しました。

主活動
購買物流→製造→出荷物流→販売・マーケティング→サービス

支援活動
人事・労務管理、技術開発、調達活動、全般管理

これは原材料を購買し、価値を付加することが企業の主活動であるとしたものである。主活動の各活動を効率化すると企業は競争優位になるとされている。

⑤ 成長マトリクス

⑤ 成長マトリクス
成長マトリクスの目的,特徴,手順を理解する。
用語例 製品・市場マトリクス,成長戦略,市場浸透戦略,市場開拓戦略,製品開発戦略,
多角化戦略

アンゾフの成長マトリクス(製品・市場マトリクス)と呼ばれるフレームワークで、イーゴル・アンゾフが提唱した理論です。

https://mirasapo-plus.go.jp/hint/15043/

参考
https://mirasapo-plus.go.jp/hint/15043/

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