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(1)マーケティング理論
①マーケティング分析
マーケティングとは、フィリップ・コトラー(1931~)によれば「ニーズに応えて利益を上げること」です。無理に売り込まなくても自然と商品が売れるようにする仕組みづくりとも言えます。その仕組みづくりをするために、市場規模、顧客ニーズ、自社の経営資源、業績、競合関係などの分析を行います。
市場調査
市場はマーケットとも言い、もともとは売り手と買い手が集まる市場(いちば)のことを指しますが、マーケティングにおいては買い手がいる抽象的な空間を指します。ある商品を売ろうとして売り場に並べた場合、その商品を買うことを目的に売り場に来た人はもちろん、通りすがりの人や来ていないけど欲しい人など潜在的な顧客も含めて市場と呼びます。
市場調査(マーケティングリサーチ)はマーケティングに必要な情報を収集・分析しますが、イメージとしてはアンケート調査を思い浮かべることが多く、実際に手法としてよく利用されています。しかし、実際には計画を行うこと、実際にアンケートなどで調査をすること、調査結果を分析することなど様々な過程が存在し種類も様々です。
3C分析
3C分析とは、自社(Company)、顧客(Customer)、競合相手(Competitor)の3つの視点で分析を行うフレームワークです。
自社(Company):自社の資産、ブランド力、市場でのポジションなどを分析
顧客(Customer):顧客ニーズ、市場規模、市場の成長性などを分析
競合相手(Competitor):競合相手の技術力、資産、ブランド力、参入障壁などを分析
3C分析は経営コンサルタントの大前研一が提唱したもので、日本発のフレームワークです。
マクロ環境分析
外部環境にはミクロ環境とマクロ環境があります。簡単に言うと、ミクロ環境は企業内である程度コントロール可能な環境で、マクロ環境は企業としてはどうにもならない環境です。
マクロ環境分析は企業としてはどうにもならない環境を分析することです。代表的な手法としてPEST分析があります。
PEST分析は以下の4つの環境要因を分析します。
政治(Politics):法律、政治、税制などを分析
経済(Economy):景気、物価、為替、株価、金利などを分析
社会(Society):人口、年齢構成、流行、世論、宗教などを分析
技術(Technology):技術動向、インフラ、特許などを分析
PEST分析を提唱したのはフィリップ・コトラーです。PEST分析で3~5年程度の中長期的な動向を予測します。外部要因分析の代表的な手法で、SWOT分析と組み合わせて用いられることもあります。
STP分析
マーケティング手法でマスマーケティングという手法がありました。これは市場を単一的なものと足ら得て画一的に分析を行う手法ですが、顧客のニーズはそれぞれ違い市場が単一的なものではないため実情とそぐわない問題がありました。
そこでフィリップ・コトラーは市場を細かく分けて分析することを提唱しました。これがSTP分析です。STP分析は次の方法で市場を分析します。
①市場を細分化してみる(Segmentation:セグメンテーション)
②標的の市場を決める(Targeting:ターゲティング)
③市場でのポジションを明確にする(Positioning:ポジショニング)
セグメンテーションについては、どのレベルで・どの切り口で細分化するかが重要になってきます。細分化し、ごく小さな市場になったときにその市場を狙うマーケティングをニッチ・マーケティングといいます。細分化を進めると最終的に個人に行きつきます。消費者個人のニーズに合わせて行うマーケティングをワン・トゥ・ワンマーケティングといいます。
細分化の方法(切り口)にも様々な種類があり、主に次の4つの視点が知られています。
・地理(ジオグラフィック)基準:地域、人口、人口密度、気候など
・人口統計(デモグラフィックス)基準:年齢、性別、職業、所得、家族、教育水準、人種、国籍など
・心理的(サイコグラフィックス)基準:ライフスタイル、個性、価値観、好みなど
・行動基準:使用率、ロイヤルティなど
コンジョイント分析
コンジョイント分析は、商品がもつ価格,デザイン,使いやすさなど,購入者が重視している複数の属性の組合せを分析する手法です。
質問法、観察法、実験法
1次データの収集方法の代表的な手法に次の3つがあります。
・質問法:アンケートやインタビューによって消費者の意見を収集する方法
・観察法:店舗内の顧客の動きなどを観察して、データを収集する方法
・実験法:変数を操作してその影響を調査する方法
RFM分析
RFM分析は顧客のランク付け手法です。最終購買日(Recency)、購買頻度(Frequency)、購買金額(Monetary)の3つの観点でポイントを付けて、ランク付けを行います。
消費者行動モデル(AIDMA)
消費者が商品を知ってから購買に至るまでの過程を段階的に表したものを消費者行動モデル(AIDMAの法則)といいます。AIDMAの詳細は以下です。
①注目(Attention):商品を見つける
②関心(Interest):商品に興味を持つ
③欲求(Desire):商品を欲しいと思う
④記憶(Memory):商品を覚える
⑤行動(Action):商品を購入する
②マーケティングミックス
マーケティングミックスは、マーケティング目標を達成するために様々な戦略を組み合わせることです。マーケティングの4Pやマーケティングの4Cを適切に組み合わせて実現します。
マーケティングの4P
マーケティングの4Pはアメリカの経営学者ジェローム・マッカーシー(1928~2015)が1960年代に提唱したマーケティングミックスの代表的なフレームワークです。マッカーシーの4Pとも呼ばれます。4Pとは以下です。
- 製品(Product)
商品計画。ニーズにマッチした商品を提供するための戦略。 - 価格(Price)
販売価格。市場に投入するための最適な価格を設定するための戦略。 - 流通(Place)
販売経路。消費者に商品を届けるための流通・チャネルを最適化するための戦略。 - 販売促進(Promotion)
商品の宣伝などを行い販売促進を行うための戦略。
マーケティングの4C
4Pが売り手側のものであるのに対し、4Cは買い手側のものです。4Cはアメリカの経済学者ロバート・ラウターボーンが提唱したためラウターボーンの4Cとも呼ばれます。これらは4Pと対応します。
- 顧客価値(Customer Value):4Pでは・・・製品(Product)
消費者にとっての価値、つまりその商品を買うメリットを考える - 顧客コスト(Customer Cost):4Pでは・・・価格(Price)
商品の値段だけでなく、消費者が商品を手にするまでの時間や送料・移動費などを含めたすべてのコストを考える - 利便性(Convenience):4Pでは・・・流通(Place)
どういった経路・ツールで購入ができれば消費者が便利であるかを考える - コミュニケーション(Communication):4Pでは・・・販売促進(Promotion)
消費者とコミュニケーションを取り細かくニーズを把握する
③ CX(Customer Experience:顧客体験)デザイン
④ サービスデザイン
(2)マーケティング戦略
マーケティング戦略とは、市場にどうアプローチをするかなどの戦略です。マーケティング理論で学習した内容もマーケティング戦略と言えますが、ここでは特に製品戦略、価格戦略、流通戦略、プロモーション戦略、Webマーケティング戦略について学びます。
①製品戦略
製品戦略で言う製品とは、モノの実物(工業製品)に限らず、サービスやイベント、経験など様々な意味を含みます。これらに対する戦略が製品戦略ですが、これについても新製品の開発に限らず、製品を作り改良し、市場を撤退するまでの一連の流れを考えるのが製品戦略です。
製品ライフサイクル(PCL)
製品戦略を考えるうえで重要な考え方に、PLC(Product Life Cycle:製品ライフサイクル)があります。PLCでは製品の売上を縦軸、導入からの時間の推移を横軸にとり、時間を導入期・成長期・成熟期・衰退期の4つに分けて考えます。
製品ライフサイクルは一般的に3年と言われていて、その間の戦略を考えます。
- 導入期
製品が市場に導入された当初の期間です。売上はゆっくりしか伸びず、利益は少ないかマイナスの時もあります。この時期の赤字を乗り越えるための財務基盤が必要です。 - 成長期
導入期の売上が伸びてくると成長期に入ります。成長期には売上が急速に伸び利益も上がってきます。競合他社が表れてくることがあり、それに対抗するために販売促進をしたり、製品の改良を行います。 - 成熟期
成熟期には市場に製品が行き渡り、売上の成長率が鈍り下がってきます。利益は安定しますが、競合他社の状況や製品の買い替えがないなどの状況により利益が減少する場合もあります。この成熟期をいかに長く保つかが重要です。 - 衰退期
消費者の嗜好の変化や代替品・競合品の出現などにより売上が低下し利益も減少します。撤退をするか続けるかを競合他社の撤退の様子や製品をみて判断します。
製品の買替を促進するための対策に計画的陳腐化があります。これには製品寿命を意図的に短くしたり、モデルチェンジを繰り返す戦略が当てはまります。売上を上げるために一定の効果がありますが、一方で製品寿命は品質にもかかわることから企業が批判されるなど問題視されることもあります。
コモディティ化
コモディティ化とは、製品が消費者に広く行き渡った結果、製品が一般化して差別化が難しくなった状態を言います。コモディティ化するとブランドや品質で差別化が難しいため、価格競争に陥ることがあります。
カニバリゼーション
カニバリゼーションとは、自社の製品が他の自社製品と競合してしまいシェアを落としてしまうことを言います。新製品を開発したり、M&Aによって他社を傘下に収める際に注意する必要があります。
②価格戦略
価格戦略によって価格を設定することをプライシングと言います。まずプライシングの目的を明確にします。その目的の具体例としては、業績が不振なので確実に利益を上げることや、市場シェアを一気に拡大させて企業を大きくするなどがあります。この目的によって価格設定手法が変わってきます。
バリュープライシング
バリュープライシングはバリュー価格設定とも言い、価格設定を低く設定し消費者を引き付ける方法です。品質が変わらないものをプライベートブランドとして安く売る手法はバリュープライシングです。これを行うためにはコスト削減をする必要があります。
スキミングプライシング
スキミングプライシングは上澄み吸収価格設定とも言い、市場導入時の代表的な価格戦略です。スキミングプライシングでは、最初から利益を上げることを目的に導入初期に比較的高価格で発売します。その利益で開発費を回収しておき、競合が低価格で発売された際に価格を下げて対抗できるようにします。
ペネトレーションプライシング
ペネトレーションプライシングは市場浸透価格設定ともいい、スキミングプライシングと同様市場導入時の代表的な価格戦略です。スキミングプライシングと違う点は、導入初期に低価格で発売し一気に市場に浸透するようにします。最初から低価格であるため競合他社がさらに低価格で発売することが難しくなります。市場シェアを取った後コスト減を行い利益を確保します。
その他の価格設定方法
その他の価格設定方法としては、コストプラス法が代表例です。これは原価に利益を加算ししっかりと利益が出るように計算した価格設定方法で、いわば正攻法な価格設定方法です。マークアップ価格設定とも呼ばれます。売れれば利益が確実に出ますが、競合他社の動向や市場への浸透などを一切考慮がされていない点がデメリットとされています。
コストプラス法と似た価格設定方法にターゲットリターン価格設定があります。これは目標とする投資収益率を実現するように価格を設定する方法です。投資収益率とは、製品を開発するために投資した額に対して期待する収益のことで、予測の販売数量なども考慮します。
価格の弾力性
縦軸に価格、横軸に需要を取って、価格に対して需要が増減する割合を取ったグラフを需要曲線と言います。
一般的には価格が低ければ需要が多く、価格が高いと需要が少なくなるため右下がりの曲線になりますが、高級品で価格が高いほど高品質とされて右上がりになることもあります。
需要曲線の傾きは製品によってさまざまで、生活必需品は価格が高くなっても需要は減りにくく右下がりの傾斜が大きくなりますが、嗜好品は価格が高くなると需要が急減するため傾斜が小さくなります。この傾斜の割合を価格弾力性と言います。
③流通戦略
④プロモーション戦略
⑤Webマーケティング戦略
(3)マーケティング手法
バイラルマーケティング
バイラルマーケティングは、商品を利用した消費者が口コミで知人に紹介するように仕向けるマーケティング手法です。インターネットの特徴を生かした手法と言えます。